統合失調症の症状への対応、抗精神病薬の副作用、精神科医との信頼関係、患者との関係性……。患者を支える家族の悩みは深く長期間に及びます。このブログは、妻の医療保護入院による夫の感情体験を書籍化後、支える家族にとっての精神疾患について、感じること考えることをテーマに更新しています。
著書 統合失調症 愛と憎しみの向こう側
患者家族の感情的混乱について書き下ろした本です(パソコン、スマートフォンなどで読むことのできる電子書籍)ブログ〝知情意〟は、この本に描いた体験を土台に更新されています
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統合失調症の発症と症状によって引き起こされる問題

統合失調症の急性期症状。
例えば陽性症状。過覚醒の状態の患者が呈する支離滅裂で解体した会話や興奮状態、逸脱した被害妄想、不潔行為、奇異性、どれもこれも、一番近い距離に居る家族の苦悩と困惑は計り知れない。

支援の質も量も違う他国の衝撃を単に横ならべにしても仕方はないが、中国で統合失調症の息子を11年間 檻の中で生活させていたというニュースが報道されていた。
取材に応じながら流れる母親の涙と、その行為はどこでどうリンクするのだろうと考えれば切なさと怒りが交錯する。
だが、ネットで拾い読みしたニュース記事に僕はあることを思い起こした。
それは、妻が隔離室に入り絶望感に打ちひしがれていた時の義両親とのやりとりのことだ。急性期の症状を激しく呈する妻の状態は、抗精神病薬で落ち着く気配すら感じない。

統合失調症は、医療に繋げたからと言ってひと安心できるものでもなくて、抗精神病薬の増量と症状の減退が一定して結びつくものでもない。
薬を増やしてはいるが、効果があらわれない。そうやって何年も入院している他患者のケースもあるとする主治医の口癖。それは、ある意味で正論ではあるが、さじを投げられたと錯覚するような陰性感情を僕に植え付ける。
降り止まぬ雨に、皆……追い詰められていた。
隔離室に身体拘束。雨は止まぬどころか次第に激しさを増すようでもある。
そして医者ですら先はわかりませんと明言する事態に、隔離室がどうした? たとえ檻に入れられたとしても、それで病気が治るのなら可哀そうともなんとも思わないと言い出す義両親。
こいつら……何言ってやがる……
当時、刃向かう訳にもいかない相手に対して僕は心の中で拳を握りしめていた。
けれども、今思えばその時の言い様のない程の怒りは親族に向けたものではなく、その現実に対するものだったのだろう。
何故なら、それを言わせた義両親の苦悩もまた、とてつもないものだったからだと思うからだ。
切なさと怒り。それは、僕にとって紙一重で結びつく。


その頃の僕には、何かどこかで自分達一家が迷惑な存在ではないだろうかという地域への負い目もあった。
「困ったことがあればいつでも相談してくださいね」
妻が入院してしまって以来、そんな隣家からの声掛けに一瞬心は温まるが、不可解で衝動的、予測の難しい患者の行動に悩む当事者の悩みを、隣家という一番身近な垢の他人に打ち明けられる人がどれほどいるのだろうか。
誰だっていい……
どうしようもないこの胸の不安を、許す限りの時間を割いて聞いて欲しい。
それが正直な気持ちであったとしても、大丈夫ですの一言で気持ちを封じ込める僕は、確かに打ち明けることへの損得を持ち合わせていたと思う。
偏見と警戒を生み出す損。理解と協力を得られる得。
逃げようのない距離感で生活する隣家とは、そのどちらもが負担になるのかもしれないと考える僕は、結果的に負い目という感情に行き着いた。


こんな経験からも、統合失調症は病気そのものが患者に与える苦しみに加えて、家族をはじめとする患者と関係する人々の精神的、社会的な問題を生じさせる病気だと認識しているが、今度は個人の体験から切り離して、話をもっと広げてみたいと思う。

統合失調症患者の離婚率は、一般の離婚率の3倍。
統合失調症患者の自殺率は一般人口の自殺率の30倍。
日本における統合失調症の年間総費用推計(医療費。社会サービス費。疾病就業、病気欠勤、非就業による労働損失。)は2兆円強。
世界五大医学雑誌のうちのひとつ ランセット誌に掲載された論文にある、身体疾患を含めた全ての疾患を対象とした調査で、社会的負担や実生活への影響度が最も大きいとされたのは急性期における統合失調症だとする結果。

これらの切抜きは自分が思うままに検索してみて寄せ集めたようなものだが、 再発の可能性が高く慢性的に経過する統合失調症は、当事者のみならずサポートする家族、医療、社会全体に対する幅広い領域に大きな負荷を及ぼす疾患であることがわかる。
離婚も自殺も、その向こう側には関係する(残された)人々が必ず存在する。
また、社会全体の労働損失についてを個々で考える当事者家族はまずいないだろうが、金銭的な負荷を考える場合に月々の入院費用に頭を抱える家族は多いと思う。
僕の場合も医療保護入院初月の請求書には自分の月給をはるかに上回る、何十万という金額には正直驚いた。高額医療費限度額適用申請が利かなければ治療を受けさせてやることすらできなかったはずだ。
とは言っても、妻が医療保護入院となった直後は金銭の問題に気持ちを向ける余裕は皆無であり、ただひたすら妻の回復を案じるだけの日々ではあったが……。

統合失調症……、社会的に大きな問題を投げ掛ける病気であると共に、末端の個人の生活環境や人生模様に深く細かい問題を残す病気。
僕にはそのように思える。

参考URL
統合失調症の年間総費用推計
Common values in assessing health outcomes from disease and injury: disability weights measurement study for the Global Burden of Disease Study 2010.
おりの中に11年 中国



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2 件のコメント:

  1. 未婚の弟が統合失調症と診断され何度目の入院になるのでしょう。年が明けたので足掛け3年になります。母が認知症になって施設に入所してまもなくのことでした。私だけが健康でいるので2人の対応と実家の管理もしているのですが、希望を持てない日々に悩んでいます。今年いっぱい応援しても先が見えないようなら、施設入所を考えたほうが良いのでしょうか?家族は応援してくれますが、常に2人のことが頭の片隅に有って気が休まりません。こんなことは自分勝手な考えでしょうか?アドバイスが頂けたなら嬉しいです。〔弟は最初の発症からは20年くらいになり、今回の入院が一番長引いております〕

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    1. 自分勝手だとは思いません。
      そして「私だけが健康でいる」と、負い目を感じなければならない理由などありません。
      匿名様の今の気持ちはきっと、ご家族の応援だけでは支えきれる〝これまでの苦労〟によって御自身の健常さえも責めておられると、そんなことを感じました。
      アドバイスと言えぬかもしれませんが、たとえば施設入所を御自身の頭の中だけで検討するのではなく、実際に候補となる施設に出向き、施設長や職員の方と会話を交わすだけで、それまでにはなかった考え方に傾くかもしれません。つまり患者にとって家庭療養だけが〝正〟で施設暮らしは〝負〟だと思い込んでいたのは誰か?患者も家族も関係者も…誰もが幸せにはなれないとしても、誰もが不幸にはならないために他者や他力の資源をフル活用して、問題を薄めていくという流れ…など。
      どんどん他者を頼ることです。
      そう、僕は感じます。

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