統合失調症の症状への対応、抗精神病薬の副作用、精神科医との信頼関係、患者との関係性……。患者を支える家族の悩みは深く長期間に及びます。このブログは、妻の医療保護入院による夫の感情体験を書籍化後、支える家族にとっての精神疾患について、感じること考えることをテーマに更新しています。
著書 統合失調症 愛と憎しみの向こう側
患者家族の感情的混乱について書き下ろした本です(パソコン、スマートフォンなどで読むことのできる電子書籍)ブログ〝知情意〟は、この本に描いた体験を土台に更新されています
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医療保護入院が変わる 非自発的入院が及ぼす問題(私たちの場合)

ある夫婦にとっての医療保護入院

医療保護入院――。
過去、僕と妻は保護者と医療保護入院者という関係で一年を過ごした。
もう少し細かく言うなれば、非自発的入院である医療保護入院によって閉鎖病棟へ入棟したが、病状の回復に伴いながら退院間近には任意入院という自発的入院形態へと切り替わった。そして退院に至る。

無論、妻の疾患そのものに関する問題や家族として抱えた二次的な問題は、重く深く僕を疲労困憊させたが、それはともかくとして、この局面では二つの大きな問題が発生した。
それは、治療者との信頼関係の崩壊と親族間の軋轢だった。
〝治療者との信頼関係〟とは言うが、もちろん僕は当事者ではなく家族の立場だから極端な話、たとえ僕と主治医が角突き合いをしていたとしても、妻との信頼関係が成立さえしていれば問題はなかった。だがしかし、8ヶ月に及ぶ治療関係において妻は主治医の名前さえ知らなかったのだから、患者と治療者における関係性の全容は語るまでもないだろう。
そして二つ目の問題である、親族間の軋轢。
僕らの経験した医療保護入院は2014年4月の法改正前であるから、医療保護入院中の保護者は一定で選任には順位があった。つまり、親でも兄弟でも誰もが保護者を名乗ることができる現法とは違う。それにより、妻の保護者は第一順位である僕であり、入院への同意や退院請求、治療方針など、法的な効力をともなって医療機関と事を進められるのは義両親ではなく僕だった。

このことは、通常であればなんら問題が生じることではない。
患者を支える親族一同として、治療に関する意見を持ち寄り協力し合う。そして結論的な部分であったり治療機関との連絡調整役としてその役目を果たせば良いからだ。
けれども、嫁いだ娘は娘婿の接し方により精神病を発症したと論じる義両親にとって、医療保護入院の保護者制度は悪法とも言えたのだろう。
義両親にとって、僕は子を精神病に発症させた〝加害者〟であり、こんなことになってしまった以上〝産み育てた娘を病気にさせておいて、もう、これ以上かかわるな〟それが、義両親の僕への真意だった。
だから、義両親にとっての医療保護入院とは、精神保健福祉法に照らした法的な保護者の第一順位が配偶者の僕である以上、保護者制度に守られた僕に好き勝手な意見を言わせてしまう悪法だったとなる。
そういえば、保護者である僕の意向を支持する他ありませんとする担当医に対してうなだれ〝法律さえ無かったらお前の言うとおりにはさせずにすんだ〟と逆上する義母の感情を思い出す。

患者に対する二方向からの愛情が保護者制度によって歩み寄り協力しあうのではなく、反発と発言の力関係を生み出していたという自分達のケースは、医師からすれば稀な患者家族だったのかもしれない。
家族側の折り合いの悪さは担当医としてもマイナスな問題であったことは明確で、保護者の意向を支持しながらも親子関係を尊重することは、はっきり言うと〝相手をしてられない〟対象だったのではないだろうか……。と同時に、治療に非協力的な厄介な家族。
精神科医療の世界にはそれこそ様々な精神科医がいると思うが、この時の担当医はおそらく医療保護入院によって患者を病棟入りさせる家族感情に一定の観念をもっていたと感じている。それは、家庭で手に負えない患者の面倒を精神科病院が看てやっているのだから何をそう悲しむ必要があるのですかという疑問に満ちたスタンスだ。そのことは「入院は旦那さんが希望されたことですよね」と口にする医師の口調と表情に見え隠れしていたように思える。

面会のたびに妻が訴える病棟での不安や恐怖はもはや治療上の問題だけではないはずだと主張する僕と、訴えのすべては精神症状によるものだと主張する担当医。
他方、精神病院なんて昔っからそんなところ……過酷とはいえども耐えさせることが親の愛情だと説く義両親との不一致。
精神科医療の特殊性と医療保護入院制度による感情摩擦。
それに加えて治療機関や治療者の格差。当時の僕は患者が最も辛い時期であろう急性期において、入院させ医療に繋げたのだと自分に言い聞かせたい反面、その医療現場というよりは保護と収容のイメージばかりが先行する現場に対し、医療保護入院と呼ぶよりは保護入院と呼称を変えた方が家族としてまだ納得がいくのではないかという感情を抱いた。この、混乱する家族感情については統合失調症の患者家族の立場で書き下ろした本のテーマとして詳しく書き下ろしている。


ところで、統合失調症は慢性的、長期的に付き合っていかなければならない疾患だ。
入院して回復して退院する。そして回復した状態が継続されていわゆる寛解状態であり続けられればベストだが、実際のところ、再発という大きな問題を無視するわけにもいかない。
つまり、再発して再入院しなければならない可能性がゼロではないのだと認識しておかなければならない病気なのだ。
勿論、再発させてしまうことがないように、妻に対する適度で必要な援助と努力は怠ることは無いにしても、再発しない保証など誰に取り付けられるものでもない。


精神保健福祉法の改正内容

平成26年4月に精神保健福祉法が改正され、医療保護入院制度が改正された。
もしも再発と再入院を余儀なくされた場合、既述のような考えからも、改正される医療保護入院制度は当事者である自分達にとって決して無関係ではない。
そして、法改正後の医療機関側からの対応と発言は自分の経験したそれとガラリと変わるのだから予備知識として持っておくべきでもあり、余談だが自分の親の介護を見据えた時、認知症問題と医療保護入院の理解は誰もが持ち合わせておくべき重要な問題とも言える。

1.保護者制度の廃止
主たる保護者である家族には、精神障害者に治療を受けさせる義務等が課されていたが、高齢化する家族への負担増大等の理由により保護者に関する規定を削除する。
つまり保護者制度そのものが廃止される。

2.厚生労働大臣が策定する、「精神障害者の医療の提供を確保するための指針」が盛り込まれる。

3.医療保護入院制度の見直し
医療保護入院における保護者の同意要件が撤廃され、家族等の同意要件を導入。
また、医療保護入院等の為の移送についても「保護者の同意」から「家族等のうちいずれかの者」へ変更。

医療保護入院における従来の保護者は、第一順位に該当するのが後見人、保佐人。以下順番に配偶者(内縁の関係を除く)、親権者(両親が婚姻中であれば父母双方による同意が必要)、兄弟等(家庭裁判所が選任する扶養義務者)……の順位でもって保護者に選任される。
そして、選任される保護者は一名であり、入退院は精神保健指定医の診断と保護者の意思により決まる。したがって、入院に際して医師と保護者以外の公的な第三者の関与無しに入院させてしまえることもできた。
退院についても、保護者の意向次第では入院させ退院させないという根の深い問題も生じさせ、保護者制度自体が社会的入院という問題を生み出すひとつの要因でもあった。
これに対して保護者制度を撤廃する法改正後では配偶者、親、兄弟等のいずれかの者の同意により入院させることが可能となる。
が、病院経営の思惑や国策の財源問題、そして個別の家庭問題や相続等、様々な問題をはらんでいることは既にネット上でも議論されている通りではある……。

4.精神医療審査会に関する見直し

精神医療審査会の委員として、法律に関し学識経験を有する者及びその他の学識経験を有する者(旧条文)から、「精神障害者の保健又は福祉に関し学識経験を有する者を規定する」と、その人選範囲がより明確化される。(これについては平成28年4月1日施行)

精神医療審査会に対し、退院等の請求をできる者として入院者本人と家族等を規定する。


5.その他、精神科病院の管理者に、精神保健福祉士等の退院後の生活相談を行う者の設置や、地域援助事業者(患者家族の相談に応じ、必要な情報提供を行う相談支援事業者)との連携、退院促進と地域移行への体制整備が義務付けられる。


現状、精神保健指定医の開業増加する一方で急性期医療に携わる人材不足問題や、新規入院患者の在院期間が短縮傾向を見せる一方で、依然20万人超えの一年以上の長期入院患者が存在する現状の問題に照らし、これからは急性期に手厚い医療を提供する仕組みや、精神障害者に対する良質で適切な医療、そして退院促進と地域への移行を実現するため施策が展開されてゆく。
いずれにしても、一患者家族の立場として今後の再入院はどうしても避けたい事態でもありながらも、長期的に付き合わざるを得ない疾患である以上、国策の動向にはこれからも関心を持ち続けたいと思う。



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7 件のコメント:

  1. 嫁を医療保護入院させた経験があります。検索でこのブログにたどり着き、スマホから電子書籍を読ませていただきました。相手(患者)の知らないところで読めることは電子書籍のメリットだと言えますね。それはそうと、私も嫁を病院に入れたときは悲観的な気持ちをいっぱいにして毎日を過ごしていました。あー、あのとき、このブログと電子書籍に出会っていれば随分と励まされただろうなあーって思います。体験を通じたストレートなメッセージ、とても良かったです。ありがとうございました。

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    1. 私の方こそ、そのようにおっしゃっていただけると大変うれしく思います。家族の立場としても、特有の悲観を伴う非自発的入院。強い葛藤もあられたことだと思います。匿名さんご夫妻の、これからの毎日が穏やかなものでありますように。

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  2. 明後日入院することが決まりました。妻は知りません。

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    1. 文面から察するところ、休日明けに奥様が入院される(入院させる)状況だと読みました。(逆ではないと感じました)

      そして、書き捨てるようなコメントからは途方もなく窮した切なさが伝わってくるかのようです。

      人は、このような場合につい「終わり」の感情に包まれてしまうのだと思います。
      けれど、入院は「終わり」ではなく「始まり」なのだと思います。始まりはどこへ向かうための「始まり」なのか?
      それは希望へ向かうための「始まり」なのだと思います。

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  3. 私は 父親に 入院させられました。とても いい病院で 今も通院しています。ただ入院は もう絶対に いやです。重い症状の人が多く とても怖かった。退院後は 病気の事を理解して うまく付き合って11年たちます。早く入院を決断してくれた父に 感謝してす。悲観的に ならないで下さい。

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    1. 愛する家族を精神病院に力ずくで入院させることの悲しみは、患者から「入院させられた」という敵意によって、さらに深い失意に見舞われます。それが、患者家族の気持ちです。

      11年の時が流れ、その感謝の心は親御さんのこれからの人生を支え続けることでしょう。あなたの見えないところで、あなたが回復した喜びで泣き崩れているかもしれません。…と、そこまでは、わかりませんが。

      統合失調症と患者と家族の悲しすぎる事例は山ほどあります。
      ですが、治療の結果、さめざめと泣く喜びに包まれる人々も山ほどいます。

      あなたのような方からのメッセージは「悲観的になるしかない人たち」に希望を与えてくれるはずです。

      ありがとうございました。

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  4. 東日本震災後、当時22才の息子が精神的に不安定で暴言、物を蹴飛ばす等困惑してました。愛息を心療内科、精神科通院させました。仕事上うつ病や精神疾患を患う人が多く上司も相談にのり、病院医師と面談したいとのことでしたが、病名がうつ病、パニック病、軽度の統合失調症だったため、未来ある若者を精神疾患者にしたくなかった親は、上司を医師に会わせませんでした。上司は仕事休業して、病名分医療補償がもらえると息子にいったそうです。将来ある息子の病名を家族意外知らせたくありませんでした。任意入院という形で精神病院に2週間入院。息子は本人の意思に関係なく入院させられた事恨んでました。入院したことで自分の人生終わりだと。退院後はギャンブル、お酒と人が変わったようにお金使いが荒くなり、借金までしてました。病院も3件行ったり保健所に精神疾患相談したりしましたが、即戦力にはならず家族の精神的負担は大変でした。退院して5年位立ちますが、今、後悔は上司のご厚意に添えば良かったと思います。

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