統合失調症の症状への対応、抗精神病薬の副作用、精神科医との信頼関係、患者との関係性……。患者を支える家族の悩みは深く長期間に及びます。このブログは、妻の医療保護入院による夫の感情体験を書籍化後、支える家族にとっての精神疾患について、感じること考えることをテーマに更新しています。
著書 統合失調症 愛と憎しみの向こう側
患者家族の感情的混乱について書き下ろした本です(パソコン、スマートフォンなどで読むことのできる電子書籍)ブログ〝知情意〟は、この本に描いた体験を土台に更新されています
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統合失調症 二度生きる人生と夫婦関係

患者家族は統合失調症患者から敵意を抱かれてしまうことがある。

無論、敵意は本意でも真意でもない場合が多く、よく言われるように病気がさせた言動が〝敵意〟と感じてしまう仮象と言える。
このことは、なにも統合失調症に限らず相手がうつ病であっても精神疾患特有の病像ではないか。

だとしても、〝誰のせいで病気になった?〟と患者から詰め寄られる家族の心情を思えば精神疾患のむごさを感じずにはいられない……。
なぜなら〝誰のせいで……〟のひと言は、それまで長い長い時間をもとに築き上げられてきた人間関係を一瞬にして破壊してしまうエネルギーを秘めているからだ。


それはちょうど晩秋から冬へと季節が移動する今の頃だった。
「帰れ!」
医療保護入院中だった妻に吐き捨てられたこの言葉。
妻への愛情は力なくさ迷い、未来にとまどう僕がいた。
また、面会室に掲示されていた製薬会社のポスターを乱暴に引っ剥がすとビリビリに破り捨てて見せた彼女の悲しみは容易に共感できるほど薄っぺらいものではなかったはずだ。
考えるべき大事なことを頭では理解していようとも、もうもとの二人には戻れないかもしれないと僕の心はグラグラと揺れていた。

時間の運行に身を任せながら症状と人間関係の回復に全てを任せるしかないと思いつつ、人生にはどうにもならないことがたしかにあるんだと自らに言い聞かせた。つまりそれは、もうあきらめろ……と自らを諭す自分が存在したことも事実だ。

そのころに降る冷たい雨は、もとは他人でしかない夫婦の終わりを奏でるような……そんな、感傷に浸らせてくれたように思う。
そう、もしかすると僕らの関係はそこでひとつの区切りを迎えていたのだろう。


時は流れた――。

統合失調症は、人生を〝二度〟生きられる疾患かもしれない。
発症の根拠には精神医学的な脳内の異変が核心となるものの、妻が日常に抱えたストレッサーや思考癖などの人間的要因を抜きにして考えることもできないだろう。
人はなにかの病気になれば〝もとの自分に戻りたい〟と反射的に考えるのが常ではあるが、統合失調症においては元の自分に戻ってしまえば再び苦しまなければならないリスクもなくはない。ならば、精神的な慢性疾患を背負い生きるということは、それまでの自分に執着することではなく新しい自分を知ることだとは言えないだろうか?

人生の途中で統合失調症を発症するも治療の成果に恵まれて寛解の域に達するなら、そこにあるのは当事者の自分らしさ、かもしれない。
――妻は人生を二度生きている。と感慨にふけるのは、そんな理由からである。

ところで、このことは夫婦関係にも言える。
その頃に降る冷たい雨は夫婦関係の終わりを奏でるようであった。
決して珍しくもなくむしろ多くのケースとも言える、重い精神疾患を理由とする離婚。
結婚生活の幕引きを奏でる冷たい雨は、おぼろげでありながら妙に説得力があるなと雨空を幾度も見上げた。が、幕引きされたのは第一部だった。

寛解後の妻は、子供返りしたかのような人間味を発揮してくれることもあるが、見方を変えれば夫としてようやく彼女の〝自分らしさ〟を知れた気がするのだ。
そんな妻を感じる日々、人生を二度生きるかのような妻を横目にしながら僕は精神疾患のむごさをふと思い起こす。誰のせいでもなく発病したことを理由に人間関係を切ってしまわなければならない事実を〝むごさ〟と言わずになんと言えばいいのだろう。
精神疾患の引き起こす問題の本質がそこにある。

今、僕の胸中に記録された〝むごさ〟は記憶に変わった。
予後は良好、僕らは夫婦関係の第二部を進行している。

もっとも、僕らの夫婦関係は二部構成であるらしいが……



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3 件のコメント:

  1. 家族さん側さんから見た
    統合失調症患者についてなんですよね。

    とりあえず離婚されなくって
    良かったです。

    私は患者なので
    どれほど両親に心配を
    かけているのだろうか。と
    振り返させてもらいました。

    ふと父が言った言葉
    統合失調症で
    結婚されている方での話を
    聞いたのですが
    家族大変やと一言言われました。

    ほんと大変だと思います。

    私はよく自分が一人になったらと
    言う事ばかり考えてしまいますが
    父や母はそんなこと考えなくていいからと
    優しく言ってくれます。

    どうにかなるだろうと
    でんと構えていたら
    どうにかなると思っていたら
    それでいいのではないかと
    勝手に想ってしまします。

    家族側から見ても
    一日一日楽しんで
    行けたらなって
    思ってくれていると思いますし。

    私も絶望よりも
    一日一日楽しい方に目を向けて行くのが
    一番かなって思います。

    今日一日が楽しく過ぎれば
    一日一日過ぎて行くのではと
    思います。

    奥さんが明るい方に
    目を向けてくださるといいですね。

    今まで生きてきての
    お休み期間が今の時期なのかも
    しれませんね。

    まだ二回分しか読んでいまっせんので
    又ゆっくりと読ませていただきます。

    返信削除
    返信
    1. 患者と家族。それぞれの苦悩を比較することは不毛です。互いに必要としあう関係。それが大事だと考えています。

      削除
  2. そうですか。

    それぞれの苦悩を比較することは
    不毛ですかぁ。

    立場が違うからなのでしょうか?

    家族さんから見た第三者の
    統合失調症と言う病気

    患者さんから主観的に見た
    統合失調症という病気も
    また違うのでしょうね。

    離婚ですか。。。

    他人の私はやめておいた方がいいと
    勝手に想いますが
    統合失調症を受け止める
    家族さんからはまた
    全く違う感想なのでしょうね。

    どちらも大変だと思います。

    私は将来結婚しないつもりです。

    いろんな人に迷惑をかけるからです。
    自分の事でいっぱいいっぱいです。

    統合失調症の患者さんで
    結婚してらっしゃる方も
    いらっしゃるようですので
    どんな感じなのかなって思い
    他のブログ村の方のも
    読ませていただいております。

    私は今も幻聴妄想で
    苦しんでいますし
    両親や看護師さん先生に
    大迷惑なこと言ったり
    行動したりしました。

    入院生活を3年して
    この春やっと退院しました。

    それでも体調を悪くして
    寝込むこともしばしば
    なんとか訪問看護の方
    両親に支えられて
    何とかやっております。

    最悪な時をなんとか乗り切った
    と思います。

    今年一年
    健康がどんなに大事なのか
    良く分かりました。

    良く健康第一って
    言いますが

    しみじみ感じた今年一年です。

    今年ももうすぐで終わりですね。

    年末いろんな行事があるので
    大変ですが。

    家族さんにも奥さんにもこれからの
    明るい見通しがたつといいですね。

    返信削除

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