統合失調症の症状への対応、抗精神病薬の副作用、精神科医との信頼関係、患者との関係性……。患者を支える家族の悩みは深く長期間に及びます。このブログは、妻の医療保護入院による夫の感情体験を書籍化後、支える家族にとっての精神疾患について、感じること考えることをテーマに更新しています。
著書 統合失調症 愛と憎しみの向こう側
患者家族の感情的混乱について書き下ろした本です(パソコン、スマートフォンなどで読むことのできる電子書籍)ブログ〝知情意〟は、この本に描いた体験を土台に更新されています
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精神科セカンドオピニオン


妻の入院後、一か月、二か月、三か月、そして半年が過ぎ、日を重ねるにもかかわらず全く回復の兆しすら感じられない日々。
「お気持ちはわかりますが、ここは辛抱強く様子をみる以外には何も……」
そのような、担当医からの言葉に頷けたのもちょうど半年位までだったように思える。

今は薬物療法の効果に期待するしかない……。
それぐらいわかってはいるけれど、精神症状は改善されずに副作用ばかりが目立つはがゆさを煽ってくれるかのような、強力な鎮静効果を謳う精神薬の多剤化。
冷静に? 辛抱強く?
それでは聞くが、もしもあなたの配偶者が精神疾患を発症、そして人格の崩壊、社会生活を安全に過ごすことさえできずに、閉鎖病棟での保護生活に至る時、あなたはどう考え、どう生きようとしますか?
何故、薬が効かないのか?
妻は本当に統合失調症なのか?
妻を病院に預けている立場として、医者の心証を害するような発言だけは慎むべきだと感じながらも、担当医に対して不必要な問いかけをしてしまう僕は、何年も隔離室を出たり入ったりする患者もいると言うのに、半年程度でごちゃごちゃと心配事を投げ掛けてくる、患者同様に取扱いの難しい家族であったようだ。

僕はこの頃、セカンドオピニオンや誤診といったキーワードを叩き込み、ネット上を無我夢中に調べていた。

セカンドオピニオンは、治療方針に関して現主治医ではなく他医による意見を仰ぐことにより、患者のより適切な意思決定や治療方法を選択していくための行為である。
診療ではなく相談にあたるので保険は適用されず、一時間あたり一万から二万円辺りが相場。 
そして近年、精神疾患患者の薬物療法とQOLに関する問題改善にも照らし、精神科領域でのセカンドオピニオン外来は注目されているとは言うが……。


――僕が患者家族の立場でそれを利用したことへの正直な印象というのは、現在の治療方針を支持する土台の上で他医の意見を聞くことができただけということ、つまり、現担当医の見解について他医が言葉を変えて説明し直すだけだったという印象が強い。
勿論、そう感じることは現在の治療方針は妥当だという裏付けでもあるのだが、家族の本音としてはセカンドオピニオンと言うからには、現状を真っ向から否定するぐらいのスタンスの意見を期待していたことは事実。
その結果として、これでは否定しようにも否定のしようがないねと言うのであれば、そこではじめて疑問は納得へと変わるのであろうが、同業者の何処かしら煮え切れない的な歯切れの悪い答弁に対して、確かにやりきれなさは感じてしまう。
ましてや、このような制度を利用する人の大半は、現主治医への不満が少なからず有るということぐらい言わずともわかるであろうに、その不満は妥当ではありませんよと言わんばかりの結論から得られる情報は少ない。
また、「うん、この先生知っていますよ」なんて言われてしまうと、なんだか御身内的な力に押されてしまうような弱気になるものだ。それは、内科などと違って、精神科の医師数の少なさが物語っている現象なのかもしれない。


つまり、セカンドオピニオンに対する当事者サイドの期待と実際は、かなり乖離していた。
ただし、このことは根本的に歯切れの悪い精神科領域でのセカンドオピニオンについて、家族の立場の者がもった感想にすぎず、外科のように客観的な論点が明確であることと違い、精神科領域でのそれに同様の期待をもつこと自体がどうかしていると言われてしまえば反論はできないだろうし、ガイドラインに従った処方が行われている以上、他医にしても「いい先生ですよ」「いい薬ですよ」という話で閉じられることは仕方がないことなのだろう。

結論、保険の効かないセカンドオピニオンを利用する価値はどうなのか? と振り返ると、個人的には何も見当たらない。



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3 件のコメント:

  1. 妻は、何回も再発して、そのたびにECT施術をして、すでに27回のECTを行っているが、数か月もすると再発する。維持ECTという方法があるというが、主治医は副作用の「健忘」を理由に、その方法には否定的だ。
    現在、患者である妻は、一日20時間を床に臥している。陰性症状なのか、双極性障害の鬱状態なのかわからないと主治医は言う。私は、統合失調症感情障害だと思っている。
    セカンドオピニオンを受けようと、いくつかの病院を当たったところ、同一県内では、お互いに医師同士が学会などで顔を合わせていて、批判的なことは述べにくいので、県外の病院で受けたほうがいいと言われた。
    維持ECTを受けるべきか、一日20時間床に臥している生活を甘受すべきなのか。かつて、10数年、このひきこもりの生活を経験したことがある。急性期を過ぎた陰性症状だけであれば、治療はうまくいっていると考えるべきなのか? 介護に疲れた。どうやってこれから生きていけばいいのか解らない。平均余命まであと数年だ。その数年を、この状態でひたすら耐えていくべきなのか? まだ、諦めずに、新しい治療を模索すべきなのか、分からない。介護者の私に希死念慮が芽生えはじめたようだ。

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    1. >>セカンドオピニオンを受けようと、いくつかの病院を当たったところ、同一県内では、お互いに医師同士が学会などで顔を合わせていて、批判的なことは述べにくいので、県外の病院で受けたほうがいいと言われた。

      これは、セカンドオピニオンを考えられている患者家族にとっての貴重な情報だと思います。

      加えて、コメント投稿者様が決しておひとりでこたえを出そうと苦しむのではなく、今後の生き方について、多数複数の人と様々な視点による意見によって導かれていかれることを祈るほかありません。

      そしてお願いがあります。決してご自身の存在を否定されないでください。
      患者家族として、それほどむごい人生があるでしょうか?
      ご自身が生きる意味は、患者のためではなくご自身の人生にあると思います。

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    2. 早々に返信いただきありがとうございました。

      憐憫を乞うているのではないのですが、苦悶を吐露できるだけでも落ち着けるものです。ときにそれは愚痴になってしまいますが、とにかく、岩崎さんからご返事いただけたこと、とても感謝しております。

      早速、セカンドオピニオンを探してみました。国立精神・神経医療研究センター病院でさえ、統合失調症に関しては、セカンドオピニオンを受け付けていません。ましてや、私の場合、維持ECTについて相談したいので、その施術経験の豊富な病院、そして県外の病院という条件をつけて探しています。保健所などへも相談しましたが、まだ見つかっていません。
      ある意味、岩崎さんがセカンドオピニオンについて「外科のように客観的な論点が明確であることと違い、精神科領域でのそれに同様の期待を持つこと自体がどうかしている……」というのが、現実であるのかも知れません。むしろ、大学病院の紀要を読んだほうが、新しい知識は得られるのかも知れません。
      妻のお世話になっている病院は、総合病院で、精神科医も複数いますので、主治医と、「維持ECTができないのなら、主治医を替わってほしい」とまで、話し合っているのですが、素人の私の判断が確実なものであるという保証は何もありません。すでに30年以上、この病気とつきあっているのです。あわてず、探してみたいと思います。私の心を読んでくださったことに、本当に感謝申し上げます。

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