統合失調症の症状への対応、抗精神病薬の副作用、精神科医との信頼関係、患者との関係性……。患者を支える家族の悩みは深く長期間に及びます。このブログは、妻の医療保護入院による夫の感情体験を書籍化後、支える家族にとっての精神疾患について、感じること考えることをテーマに更新しています。
著書 統合失調症 愛と憎しみの向こう側
患者家族の感情的混乱について書き下ろした本です(パソコン、スマートフォンなどで読むことのできる電子書籍)ブログ〝知情意〟は、この本に描いた体験を土台に更新されています
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精神科医療の未来的構造

 精神疾患患者(とは言っても、その大部分が統合失調症患者)が、今後、より良質で適切な医療を受けられるようにするための指針作りが進められています。
そして、今夏から開催されている指針検討会、第七回を終えて公開された指針の叩き台。整備、推進、確保といった語句の多用からは、精神疾患が及ぼす社会的問題と人権に関する過去の経緯を含めた抜本的改革の必要性が、時代に対して強く問われていることを感じさせます。
精神科病床を増やして患者を地域から隔離する政策から約50年が経過。そして今、❝キュア・ケア❞の質と技術の向上や新薬の登場により、提供される治療環境は格段に進歩したのではないでしょうか? だとしても、依然、社会的問題とされる10年単位の長期入院、本人の同意を得られない場合の入院や急性期における保護的処遇に関して、常にクローズアップされる人権配慮に関する議論には完結性を伴うものではないと思います。
また疾患自体にも完結性を伴わないことを考えれば、当事者として家族として、常に社会的動向に関心を寄せることは大事なことです。
これからの精神科医療と地域資源はどのように変わろうとしているのか?
以下に、要点を列挙します。

精神病床の機能分化について

精神病床の機能分化に関する基本的な方向性は❝病院から地域へ❞

入院患者の状態に応じながら段階的に地域移行するためには、外来医療や多職種による訪問支援の充実を促進することと、それに伴う人材と財源の配分は効率的に行うものとする。

多職種によるチーム医療体制の提供により、入院患者の状態像に応じた早期退院促進に取り組む。

病院内の退院支援スタッフは、できるだけ早い段階から病院外の専門家と必要な連携を図り、退院調整を進める。

急性期、救急の患者に対して手厚く密度の高い医療を提供するための機能を確保する。その為に、精神科入院医療における医師及び看護師の数は一般病床と同等の配置を目指す。

現状、入院患者の在院期間が長期化する社会的問題を踏まえて、一年未満で退院できる為に必要な多職種によるチーム医療の提供と退院支援の取り組み強化。

重度かつ慢性の患者の定義を調査研究により十分に検討し、定義を踏まえてその特性に応じた医療を提供するための機能を確保する。

重度かつ慢性の患者以外で入院期間が1年以上の長期在院者に対して、退院支援、生活支援等を通じて地域への移行を推進すること。また、外部の支援者による訪問や外出支援を通じて、社会との繋がりを深められる開放的環境を確保することを踏まえて、原則として行動制限はしないこととする。

身体疾患を合併する患者が、それを一般病床で治療することのできる体制を確保する。また、精神科病床においても身体合併症に適切に対応できる体制を確保する。


居宅等における保健医療サービス及び福祉サービスの提供について

保健、医療、福祉の居宅サービスに関する基本的な方向性は、当事者が地域で安心して暮らせるよう、入院医療のみに頼らず、急性憎悪への対応や外来医療の充実を推進し、当事者と家族の状況に応じたサービスをいつでも提供できる体制を確保すること。

当事者が、外来医療での適切な医療とデイケアサービス等での専門的で効果的な支援を得ながら、地域で安心して生活し続けられるように体制を確保する。

医師、看護職員、精神保健福祉士、作業療法士等によるアウトリーチ(多職種チームによる訪問支援)を行うことのできる体制を病院及び診療所において整備し、退院後の病状不安定や服薬の中断など、状態に応じた適切で必要な医療へのアクセスを確保する。

24時間365日対応できる精神科救急医療体制の確保について、都道府県は通院患者の急な症状憎悪に対応できるように、精神科救急医療システムや相談窓口等の体制整備を推進する。その為にも、精神科診療所が精神科救急に参画できる体制を推進する。

都道府県は、精神科と他診療科の救急医療機関が円滑に連携出来るように、両者の関係者が参加する協議会の開催を推進し、全医療圏内で身体疾患を合併する患者の受け入れ体制を確保する。

グループホーム及び賃貸住宅等の、当事者が地域に戻った時の居住の場の確保の充実や、家賃債務保証制度の活用等の居住支援に関する施策を推進する。

相談支援、就労支援を含む日中活動支援、居住支援、ホームヘルパーの派遣等による訪問支援等の様々なサービスを地域において提供できるような支援の体制整備を推進する。


医師、看護師などの医療従事者と精神保健福祉士など保健福祉の専門家の連携について

基本的な方向性は、適切で質の高い医療の提供と地域移行の為の生活支援では多職種によるチーム医療が重要であるということ。

多職種間の連携や異なる機関同士の連携に当たっては、個人情報の保護に配慮しつつ、本人の意向を踏まえた支援を行う。

入院医療では、看護職員、精神保健福祉士、作業療法士等の多職種との適切な連携を確保して質の高いチーム医療を提供する。

在宅の治療中断者に対して、病院や診療所の医師、看護職員、作業療法士、精神保健福祉士、薬剤師、臨床心理技術者等の医療関係者を中心とするアウトリーチチームは必要に応じて保健と福祉の専門相談員と連携し、適切で必要な医療を確保する。

チームで保健医療福祉を担う専門職種その他の精神障害者を支援する人材の育成と質の向上を推進する。

当事者やその家族の気持ちを同じような立場で理解できる支援者として、ピアサポーターの育成に関する必要な研修等の取組を推進する。

医療関係者が多様な精神疾患に関する一定の知識・技術を持つことができるよう、各専門職が精神科での研修を受けることを推進する等、精神疾患の正しい知識・技術の普及啓発を推進する。

精神保健指定医へのニーズの増大や多様化等を踏まえ、精神保健指定医の人材の確保及び効率的な活用並びに質の向上を推進する。


その他、❝良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供の確保❞に関する重要事項

都道府県は、医療計画、障害福祉計画及び介護保険計画等を踏まえながら、必要な医療を提供できる体制を確保する。

当事者が適切な医療や訪問支援を受けられることや家族への相談支援等に携わる保健所の機能を、最大限に有効活用するための方策を周辺関係機関の在り方も含めて推進する。

保健所は、保健師や精神保健福祉相談員などによる相談、訪問支援を通じて、未治療者を含む当事者や家族へ精神疾患の知識普及を図る。これにより、治療の必要性理解と早期で適切な医療へのアクセスを目指す。また、重篤な精神症状を呈する患者に対する必要に応じた移送による医療保護入院の検討と調整を図る。措置入院患者への支援にも入院早期から積極的に関与し、医療機関や障害福祉サービス提供事業者と協力して退院支援の調整を行う。

市町村は当事者と家族の身近な存在として、都道府県・保健所と協力し合いながら精神保健に関する相談への対応に努めると共に、障害福祉サービスや介護サービスの提供必要量の確保と、地域包括支援センターでの相談対応に努める。

精神保健福祉センターは、精神保健の向上及び精神障害者の福祉の増進を図るための総合技術センターとして、自殺対策や災害等の際のこころのケア活動等のメンタルヘルスの課題で地域における取組の推進役となると共に、関係機関への技術指導及び技術援助、研修等による人材育成、専門的な相談並びに保健所等と協力した訪問支援等を行う。また、精神疾患の患者像の多様化に伴い、アルコール及び薬物等の依存症並びに発達障害等の専門的な相談並びに家族支援に対応できるよう相談員の質の向上や体制の整備を推進する。

精神医療審査会は、精神障害者の人権に配慮しつつその適正な医療及び保護を確保するため、精神科病院に入院している精神障害者の処遇等について専門的かつ独立的な機関として適切な審査を行うことを推進する。

精神障害者の医療及び保護の観点から、本人の同意なく入院が行われる場合においても行動の制限は最小の範囲とする。また、可能な限りインフォームドコンセントに努める等、精神障害者の人権擁護に関する国際的な取決めも踏まえつつ精神障害者の人権に最大限配慮し、その心身の状態に応じた医療を確保する。

医療保護入院に係る診断、判断を行う精神保健指定医の不足に照らし、診療所の精神保健指定医が積極的に精神保健指定医としての業務を行う体制の整備を推進する。

精神疾患の特性を踏まえ、多様な疾患や患者像に対応するためのガイドラインの整備等を通じた診療の在り方の標準化を図る。

向精神薬は依存を生じやすく過量服薬が生じやすいことを踏まえ、適正な向精神薬の処方の在り方を確立する。また、認知行動療法等の薬物療法以外の療法の普及を図る。

難治性患者に対する高度医療の提供する等、先進的な医療の普及に努める。

精神疾患の予防を図るためにも、国民各層のメンタルヘルス対策を推進する。

精神疾患の早期発見と当事者が地域で安心して暮らすことが出来るよう、学校、企業、地域社会と連携しながら精神保健医療福祉に関する知識の普及啓発を推進する。

精神疾患の治療に有効な薬剤の開発と、薬物治療以外の治療法の研究を推進する。


❝精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会❞全体的な方向性について

精神疾患を発症して通院加療または入院加療に及び、そして退院後の社会や家庭への復帰に至る経過において、患者の病状や取り巻く生活状況は変化し続けていくものである。その中で、当事者が再発を予防しながら地域社会の中で安心して暮らすことができる権利の享有を確保することが重要。

当事者の社会復帰、就業を促進し、社会貢献に参加できるよう心身の状態に応じた良質かつ適切な医療の提供を確保する。その為にも精神科医療とは、入院加療中心型から地域生活支援型への移行を実現させなければならない。そして、本指針は当事者に関与する保健、医療、福祉、全ての分野の関係者が目指すべきものとして策定される。ここで言う、全ての分野の関係者とは国、地方公共団体、当事者、家族、医療機関、保健医療福祉サービスの従事者その他の精神障害者を支援する者等を指す。

精神科医療においてもインフォームドコンセントの理念に基づき、患者本位の治療がなされることが重要だが、疾患の特性や保護の観点からも医療保護入院に代表されるように患者の意思決定を家族等が代行せざるを得ない場合がある。その場合においても、患者の人権には最大限に配慮された医療の提供でなければならない。

精神疾患に対する知識の普及啓発は、発症の予防や早期に医療へつながること、そして、当事者が安心して生活することが出来る偏見のない地域の形成につながる。

ピアサポート(同じような立場の者による支援)による当事者同士の交流を促進すると共に、当事者を身近で支える家族を支援し、社会からの孤立を防止する取り組みを推進する。
以上、まとめはここまで。



統合失調症の患者家族に関連することを中心に、要点を平易にまとめました。うつ病、自殺関連、認知症、アルコール依存などに関した部分の事項は割愛しています。❝参照先http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000031043.pdf❞

❝参考ニュース記事 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131129-00000004-cbn-soci❞
精神障害者への医療提供の指針案を了承
厚生労働省は29日、「精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会」に、同検討会の取りまとめ案を示し、大筋で了承を得た。精神障害者への医療提供の具体的な方針として、精神病床での入院期間を1年未満にする取り組みの推進などが示されている。今後、厚労省は、取りまとめ案を微修正した上で、12月26日の社会保障審議会障害者部会に報告する方針。



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